インフルエンザ | RSウィルス | |
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主な症状 | 発熱、頭痛 | 発熱、咳 |
診断 | 症状、迅速検査 | 症状、迅速検査 |
治療 | 抗菌薬 | 対症療法 |
冬に流行する代表的な感染症を紹介します。インフルエンザやRSウィルス、ヒトメタニューモウィルスなど発熱、咳、鼻汁を中心とする気道感染症は寒く乾燥した季節に流行します。
ノロウィルスやロタウィルスは嘔吐・下痢など胃腸炎をおこすウィルスで、冬に流行しやすいです。胃腸炎は別の項目で説明しますので、ここではインフルエンザとRSウィルスについて簡単に説明します。
《原因》インフルエンザウィルスは大きくA型とB型に分けられます。
A型は2009年に大流行した新型と、香港かぜといわれる型が最近の主流です。B型は少し遅れて流行し、治療や予防がやや効きにくいとされています。飛沫感染といって咳やクシャミから唾液などを介して感染します。
《症状》急激に高熱になり頭痛や怠さが出ます。咳や鼻汁も目立つようになります。治療しなくてもだいたい1週間以内にこれらの症状は改善していきます。
しかし、まれに脳症という重篤な状態になり痙攣や意識障害を起こし死にいたることもあります。とくに新型では肺炎や喘息の悪化も起こしやすいです。
《検査》迅速診断キットで行うことが多いです。発熱からの時間が短いと罹っていても反応が出ない(偽陰性)が多いので、12時間以上たってから検査することが勧められています。
《治療》抗インフルエンザウィルス薬は、内服、吸入、点滴の剤型があります。
とくに内服薬は10歳台の小児では異常行動を起こすリスクがいわれており、慎重に選ぶ必要があります。漢方薬も有効です。
いずれも症状を2日程度短縮させる効果がみとめられています。年令や既往歴に応じて薬剤を選びますのでご相談下さい。治療開始は発熱から48時間以内が推奨されています。
《予防》飛沫感染ですので、マスク、手洗い、うがいが重要です。
温度と湿度を高めにすることもウィルスを抑えるのに有用でしょう。もう一つの有用な予防策はワクチンです。予防接種後2週間から5か月程度の効果があるといわれています。
ワクチン接種をしても罹ることはあります、インフルエンザはたくさんのタイプがあるため、毎年流行するであろうタイプを専門家が予想して作られますが外れることもあります。
これまではB型には効果が乏しい可能性がいわれていましたが、今年(2015年)からはB型に対する免疫を強化したワクチンに変わっています。1歳以上の小児ではとくに有効性が高いことが2015年の研究で示されています。
《注意事項》インフルエンザの時はアスピリンや一部の解熱鎮痛剤は症状を悪化させる恐れがあります。処方された解熱剤を使いましょう。
受診のタイミングは検査に適当かつ治療が有効な、発熱から12時間以上48時間以内、がおすすめです。
《原因》冬に流行するウィルスでとくに2歳未満の小児で問題となります。飛沫感染、つまり唾液などで感染し、4-5日の潜伏期があります。
《症状》大量の鼻汁、咳、発熱が主な症状です。細気管支炎などの下気道感染をおこし、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がするような喘息に似た苦しそうな呼吸や深い咳を起こします。症状がはじまって、4-5日目にかけて症状が悪化していき、1週間程度で改善していくことが多いです。
生後数か月以内の乳児では入院になることが多い重篤な疾患です。乳児突然死の原因の一つでもあります。
《検査》迅速診断キットがありますが、保険適応があるのは1歳未満です。とくに固有の治療法があるわけではないので、当院では重症化のおそれの強い方には検査を勧めています。
《治療》診察結果から病態を考え、対症療法が基本です。世界的にも標準治療が示されていません。当院では鼻吸引、喘息や鼻炎で用いる吸入療法(ネブライザー)、症状悪化時にはステロイド内服を行っています。重症例には酸素投与や点滴をして病院を紹介します。外来では症状に応じて、喘息の治療薬や抗生物質、漢方薬を追加することもあります。
《予防》マスク、手洗い、うがいが予防の基本です。ただし問題となる年齢は乳児で、これらが十分にはできませんので、まわりのご家族などが徹底してウィルスを持ち込まないようにしてください。
ワクチンはまだ開発されていません。致命的になる可能性の高い乳児に対しては、予防策としてパリビズマブという注射を使用することができます。ワクチンではなく、抗体を投与する注射です。早産、心臓疾患、免疫不全、染色体異常など基礎疾患のある小児に限って適応があります。該当する可能性がある方はご相談ください。