
新しい話題として経鼻ワクチン(フルミスト®)の補助が出るようになったことがあります。インフルエンザの総論とワクチンについてまとめました。参考にして接種をご検討ください。
〇インフルエンザウィルス感染症
《症状》
急激に高熱になり頭痛や怠さが出ます。咳や鼻汁も目立つようになります。治療しなくてもだいたい1週間以内にこれらの症状は改善していきます。
《検査》
迅速診断キットで行うことが多いです。発熱からの時間が短いと罹っていても反応が出にくい(偽陰性)ので、12時間以上たってから検査することが勧められています。
《治療》
免疫力に問題がなければ、自然治癒する感染症です。症状を軽くするため、周囲にうつさないため、重症化を防ぐため、薬物治療を行います。抗インフルエンザウィルス薬は、内服、吸入、点滴の剤型があります。
いずれも症状を0.5-1日程度短縮させる効果がみとめられています。治療開始は発熱から48時間以内が推奨されています。
《予防》
飛沫感染ですので、マスク、手洗い、うがいが重要です。
もう一つの有用な予防策はワクチンです。注射の場合は予防接種後2週間から5か月程度の効果があるといわれています。生後6か月以降でワクチン接種ができます。13歳未満は2回接種が推奨されています。
ワクチン接種をしても罹ることはあります。免疫が全員に十分につくわけではありません。重症化を抑えるためと罹患する可能性を減らすためのワクチン接種です。
注射の痛みが苦手な方には経鼻噴霧タイプのワクチンもあります。
なお、インフルエンザは学校感染症に指定されており、発症後5日を経過し、さらに解熱後2日を経過するまでは登校(園)停止とされています。
総論としては以上です。つぎにワクチンについての各論です。
〇注射の不活化ワクチン
- 日本の標準は注射の不活化ワクチン(スプリットワクチン)。感染を完全には防げませんが、発症リスクを下げ、重症化を減らす効果があります。
- 免疫の付き方は、すでにある免疫の記憶を強める効果が中心なので、罹患歴のある方により効果的です。(0歳児では免疫が付きにくいと言われています)
- 効果は年によって変動します(株の適合状況や流行規模、年代などで差)。
(有効性のデータの一例):米CDCの2024–25シーズン中間解析では、小児の外来受診抑制 32–60%/入院抑制 63–78%と報告。
〇新しく使えるようになった経鼻生ワクチン
- 経鼻の弱毒生ワクチン(フルミスト®)が日本で承認。適応は2歳〜18歳、1回・0.2mL(左右各0.1mL噴霧)
- 小児には“鼻の粘膜で免疫が誘導される”利点があり、局所の粘膜免疫・細胞性免疫の誘導という点で理にかなう選択肢です。
- 使えない方:中等度〜重度の喘息、免疫不全・免疫抑制治療中、アスピリン内服中(18歳未満)、妊娠などは禁忌/慎重。
〇どっちを選べばいい?(注射 vs 経鼻の考え方)
- どちらも重症化予防が主目的で、発症予防は“年・株”で振れます(これは注射・経鼻に共通)
- 小児にとっては経鼻の方が、痛みがない、1回ですむ、免疫の誘導もしやすい、と相性が良い。一方で副反応で軽い鼻炎症状が出やすく、排菌(ウィルスを排出する)リスクがあります。免疫不全の方が家庭内にいる場合はやめておきましょう。
- 注射は確実に接種できる、日本では手に入りやすい、安価で幅広い年齢に接種できる利点があります。13歳未満の小児は2回接種が望ましいです。
- どちらも流行前〜初期(10-11月)の接種が望ましい(抗体がつくまで約2週間)。遅れてもシーズン中の接種は有益。12-2月が最も流行することが多いです。
- 家族に乳幼児・高齢者・基礎疾患の方がいる場合、家庭内での手洗い・マスク・換気などにも注意しましょう。







