最近は大きな流行はありませんが、咳が続く方が多い印象です。なかなか診察中には細かく説明できませんので、考えていること、診療の流れを紹介します。
咳がつづくときに考える疾患としては、感染症とアレルギーが中心になります。他には逆流性食道炎や心因性などがあります。
今回は感染症について説明します。まず、感染症ではウィルスか細菌を考えます。
ウィルスの中ではライノウィルス、ヒトメタニューモウィルス、RSウィルス、パラインフルエンザウィルスなどを想定します。症状と、年齢や周囲の流行状況から検討をつけて予後の判断をしますが、主に症状に応じた治療になります。喘鳴があるか、呼吸がしっかりできているか、クループ症候群になっていないか、診察で判断します。症状を軽くする薬を出したり、吸入などの処置、治療や対応に影響がありそうなら検査も行っています。
細菌感染では、肺炎球菌性肺炎、マイコプラズマ肺炎、百日咳などを考えます。症状や経過、年齢、流行状況から想定される菌、症状の重さ、場合によっては検査もあわせて、抗菌薬(抗生物質)を選択します。年齢により、流行しやすい菌と使える抗菌薬が異なります。
百日咳は今年流行していますが、発作性連続咳、息を吸うときの音、咳込み嘔吐などが特徴です。マイコプラズマによる気管支炎や肺炎、クラミジア肺炎なども咳が長引きますが、いずれも抗菌薬はまずはマクロライド系を使います。耐性菌が疑われたり、薬が合わない場合は違う薬に変更します。百日咳の耐性菌も最近は問題になっており、小児科学会でも抗菌薬の追加を勧めています。
抗菌薬は細菌感染を疑うときには期間や飲み方を決めてしっかり使います。感染症はほとんど(9割以上)がウィルス感染といわれており、抗菌薬を安易に使う事は副作用、耐性化の問題もありますので、避けたいと考えています。風邪に抗菌薬は効きません。他院で不要と思われる抗菌薬が使われているときや、効果がないと考えられるときは中止することも提案します。
途中で抗菌薬をやめてはいけないのではないか、と訊かれることがあります。良い指摘だと思います。抗菌薬は ’必要な人に 必要な期間 必要な量を’ 投与するのが原則と知っていての指摘と思います。これは再発や耐性菌を生み出さないための決まりごとです。しかし必要でない人への投与や効果のない薬については途中でやめることに問題はありません。常在菌(普段から身体にいる菌)のバランスが崩れるだけで、治療効果は期待できないからです。
長引く咳の対応についてまとめると、感染症と考えた場合は、症状・経過・年齢・流行状況などから細菌感染が疑われる場合は、適した抗菌薬を処方し効果をみます。2日くらいで効果判定することが多いです。ウィルス感染の場合は症状にあわせた薬で対応します。症状が改善していないときは薬を調整したり病院を紹介しますので、再受診していただいています。感染症のうち細菌感染は5-10%程度といわれているので抗菌薬を使わないことが多いです。
アレルギーによる咳、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽などについてはまた紹介したいと思います 🙂